防災と減災
こんにちは。
昨日の記事と以前の記事でお伝えしたように今回は主に「減災」について深堀していきます。
注意:長文なのでお時間あるときにお読みいただければ幸いです。
・防災と減災の違い
防災とは読んで字のごとく「災いを防ぐ」という意味です。例えば津波を防ぐために堤防を高く築くことは「防災」です。
しかし災害はいつも「想定外」なので被災することを前提に如何に「災いを減ずる」ことが出来るか、その取り組みが「減災」です。
昨今ではこの減災という考え方が主流になりつつあります。とは言え防災も同じ意味で使われることも多いですがこの記事では「減災」についてお話させて頂きます。
さて「減災」について昨日の記事でもお伝えした内閣府が発行する「減災のてびき~今すぐできる7つの備え~」から引用して先ずは解説します。
1:災害被害を少なくする「自助」「共助」
災害への備えとして
・「自助」→自分で自分を助けるための備え
・「共助」→地域や職場、団体などでみんなで助け合う備え
・「公助」→自治体や国などが助ける備え
があります。
規模も金額的にも大きいのは「公助」「共助」「自助」の順となります。
しかし一番早く身近で備えられるのは「自助」「共助」「公助」と逆の順番になります。つまり一番先に「自分で自分を助ける備え」をしましょうということです。
先ず一番先に備えるべきは「命を守る行動」だと思います。地震のときにはテーブルの下に隠れるとか、脱出路確保のためドアは開放するとか、ガスの元栓を閉めるなど。
しかしこれは頭では分かっていてもいざとなったら行動しにくいです。なので例えば我が家では日常的にスリッパを履いて生活しています。災害時に散乱し割れた食器で足の裏を怪我したり脱出する障害になったりすることを少しでも減らせるという観点からですがこれも立派な「自助」と言えます。
「共助」は地域や職場などで他のひとと協力して助け合うという意味です。最近は面倒という理由から町内会や自治会への加入率が減少傾向にありますが「減災」という観点からはあった方がいい組織、極論言えば「いざという時の為だけに自治会があってもいい」とも思います。自治会の話になると長くなるので別の機会に。
また例えば地域のお祭りなどで自治会などで飲食物を提供したりするのも立派な災害時の炊き出しの訓練とも言えるので事前演習といった体で行うだけでも対応が全く違うものになると思います。
職場の避難訓練も同じです。「面倒だなぁ」と思うこともあるかもしれませんが事前に行うだけでもいざという時に差が出ます。
2:災害時の危険を事前に把握する
お住まいの地域の状況、例えばブロック塀は何処にあるのか?消火器は何処に?地形的に高台は何処にあるのか?など事前に知っておくだけでも違います。
ウォーキングの習慣がある人は「この辺は周りより少し低いな」などある程度把握はしていると思います。ウォーキングは健康にも良いのでお勧めしますので一度確認がてらお住まいの地域を歩いてみることをお勧めします。
また市町村が発行している「ハザードマップ」を確認すると色々と知らなかったことがあったりもします。
私の自宅近くにハザードマップで「揺れやすい」ところがあるので疑問に思ったら宅地造成時に谷だったところで盛り土をしているということが判ったりしました。
ハザードマップはこちらから(国土交通省のポータルサイトです)
3:地震に強い家
昭和56年(1981年)に住宅の強さの基準が大きく変わりました。簡単に言うと築年が昭和56年以前と以後では地震に対する耐久性が違うということです。
先ずはご自宅がそれ以前か以後かどちらかに建てられたのか?把握すると良いと思います。
以後の新耐震基準で建てられたとしても経年で住宅の状態も変化します。自治体によっては無料で耐震診断をしてるところもありますので先ずは診て貰ってもいいと思います。(耐震診断してくれる業者さんもあると思いますが信用出来るところ以外はお勧めしません)
またこれも自治体によりますが、耐震リフォームに助成金が出たり、固定資産税が安くなったりすることもあります。お住まいの役場に聞いてみても良いと思います。
同様に地震保険に加入していると「地震保険料控除」というものが使え少しだけ税金が安くなります。
4:災害から命を守る
東京都の予測では巨大地震発生のときに家具類の転倒や落下により負傷する割合は34。2%、つまり3人にひとりが怪我をするとされています。
家具類の転倒防止や移動防止には色々とありますが例えば家具を天井で支える突っ張り棒などは単体では効果が薄く大きい地震では家具の転倒があるようです。なので複数の転倒防止用具を組み合わせて使うことが効果的とされています。
またガラス棚には飛散防止フィルムを貼ったり、家具が移動してしまうことを前提に脱出路確保からドアの近くには置かないなども有効とされています。
詳しくは東京消防庁が発行している「家具転倒対策ハンドブック」に詳しく記載されていますので参考頂ければと思います。
天井と家具を支える突っ張り棒タイプの器具。単体での使用だと大きい揺れで外れてしまうことがありますので他の器具との併用が望ましい。
また揺れを感知したらブレーカーが落ちる「感震ブレーカー」や既設のブレーカーに取り付けることが出来る「スイッチ断ボール」などもあります。
その上で
・先ずは寝ている間に家具が倒れないよう、倒れても大丈夫なような部屋のレイアウト
・ドアはすぐに開放する
・本棚には重い本を順に下から並べる
・家具はなるべく背の低いものにする
・窓ガラスにもフィルムを貼る(飛散防止に加えて断熱効果も期待出来る)
などの対策があります。
土砂災害などでは情報収集といち早く非難することが大切です。「土砂災害警戒情報」を聞いたら素早く避難しましょう。
5:非常用持ち出し袋の準備や備蓄をする
これは沢山ありすぎるのですが、分けて考えると良いと思います。
①常に身につけておきたいもの→発災時に有用
・身元や連絡先の判るもの(免許証やマイナンバーカード)
・持病を持っているかたは病名や処方されている薬の判るもの(お薬手帳など)
出来れば…
・小型の十特ナイフ(キーホルダーに付けられる)
・笛(防災用のホイッスルは少ない息でも音がなります)
・ハンカチなど(火災時に口を覆い少しでも煙から守る。また怪我をしたときに応急的に当て布として使える)
・携帯ラジオ 状況把握できる。
②非常用持ち出し袋→支援が届くまで生き延びる
自宅や職場で用意しておくといいでしょう。中身はそれこそ沢山あると思いますがここには、皮手袋や軍手、携帯トイレ、ラップ、紙コップや紙皿、携帯コンロと燃料、ブルーシートなど最低限のものを入れておくと良いと思います。
一番肝心なのが「水と食料」です。こちらは非常用持ち出し袋には最低限用意して、あとはいつもの生活で使用する分+アルファを常に準備しておくといいです。
例えばペットボトルの水や加工食品(カップラーメンやレトルト商品など)を用意しておくなら定期的に古い順に使っていき無くなった分をすぐに買い足していく。「ローリングストック」という考えです
飲料水はひとり一日2リットルも必要と言われています。例えば4人家族で3日分と言うとそれだけで24リットル必要になり持ち出し袋に入れておくのは現実的ではありません。
なので自宅に災害用として備蓄しておく。そして定期的に飲料水として使用し、使った分を買い足しておく。これがローリングストックです。
その他に日常的にウォーターサーバーを使っているならそのまま備蓄となります。またスーパーなどで無料の飲料水サービスをしているお店もあるので日常の煮炊き用に用意しておくのも良いかもしれません。(我が家は無料飲料水サービスとペットボトル水を常時備蓄しています)
また飲料水とは別にトイレを流す水など生活用水も必要になってきます。実は生活用水は一人当たり一日10~20リットルと飲料水より多く必要になってきます。こちらは飲料に適さない水でも構わないのでお風呂には平均200リットルくらい入るので常に水を張った状態にしておいて、入浴前に残り湯を落とし浴槽を洗ってから新しいお湯を張るというサイクルがいいと思います。
その他、エコキュートにも水が溜められます。
6:家族で防災会議を行う
家族で「災害のときにはどうする?」という話をしておくことをお勧めします。
・お住まいの近くの何処に避難場所があるのか?
・自宅の近くで危険そうな場所は何処にあるのか?
・親戚や友人知人の誰にどのように連絡するのか?
・お子さんがいる場合、通っている学校などの災害時の取り決めの確認
・どのような手段で安否の確認をするのか?災害用伝言ダイヤルの確認
など一度お話してみましょう。
7:地域との繋がりを大切にする
ここまできてやっと「共助」の段階です。如何に「自助」が大切かご理解頂けると思います。その上で日頃から地域の人たちとコミュニケーションを取っておくといざという時に助かりますし、助けられます。
・普段から挨拶をしておく。顔見知り程度でも非常時には心強いですし連帯感が生まれやすくなります。
・例えば高齢者の方がいる、障がいを持っている方がいると認識するだけでいざというときに助け合えます。
・地域の防災訓練などに参加する。地域差はありますが訓練するだけで実践時には対応が全く変わってきます。
行政の「公助」は町内会や自治体ごとに人数の把握をする場合もあります。ご近所づきあいは面倒と思うかたもいるとは思いますがいざという時に助けられるのであれば言い方は悪いですが最低限のお付き合いはしておいたほうがお得だと思います。
また「共助」には町内会や自治会だけでなく沢山の地域の団体があります。例えば公民館、商工会議所、赤十字、商店街、婦人会・女性会、青年会議所、PTA、民生委員、趣味のサークルなどなど…
そういった団体に所属するのもこれまた面倒かもしれませんが、例えば趣味友達がいるだけでも違います。人はひとりでは生きられないものです。地域と何かしらの繋がりを持っておくのも良いと思います。
また防災士という資格もあります。自分だけでなく家族、そして地域の方を守るのにも役立つ資格です。ご興味ある方はリンクから参照下さい。
ここからの※印は荒井の主観的な補足になります。
※正常化バイアス
予期しない事態にあったとき、「そんなことはありえない」といった先入観や偏見を働かせて、「事態は正常の範囲」だと自動的に認識する心のメカニズムのことです。
大雨警報が出ているのに川の様子を見に行って被災するかたの多くが正常化バイアスによるものだと言われています。
災害時には大げさくらいがちょうどいいのです!
※デマやうわさ
ひとが集まれば、そして災害時には「デマ」や「うわさ」がまことしやかに流れてきます。現に能登半島地震でもX(旧ツイッター)でデマやフェイク画像が拡散しました。
「共助」の段階でもそういった話が出てくると思いますが、ここは一度落ち着いて自分の得た確かな情報に基づいた判断が必要になるでしょう。
とは言えあからさまに否定すると人間関係にも支障が出たりしかねないので落ち着いてとりあえず聞いておくだけに留めておいた方が良いと思います。
「流言は智者に止まる」(デマやうわさも賢い人のところでストップするという意味)なのです。
※犯罪や性犯罪に注意
これも災害のたびに繰り返されています。犯罪や性犯罪に巻き込まれないためにはとにかく孤立しない、誰かと常に一緒にいるということに尽きると思います。
※ストレス
これはどうしようもないかもしれません。慣れない避難生活、いつ終わるか判らない状況でストレスを溜めないほうが難しいというものです。
また避難所での生活で対人ストレスも溜まっていくと思います。そうならない確固たる方法はわかりませんが、個人的には「争わない」ことだと思います。
みんな不安で疲れている状況で「争わない」のは難しいかもしれません。争ってくるひともいるでしょう。言いなりになれという訳ではなく余計なストレスを更に溜め込まないためにもなるべく「争わない」ことが大切なのかもしれません。
文章でまとめてみましたが、先にご紹介した「減災のてびき」をプリントアウトして読み込んでも良いと思いますし、役所に行けばハザードマップもあります。
ここまでお読みいただいたかたは一度確認してみることをお勧めします。
災害はいつ起きるか判りません。事前に出来ること、例えば今日からお風呂のお水は次の日に入る前に落として湯舟を洗ってから新しいお湯を張るとか、スリッパで室内を過ごすようにするというだけでも立派な減災準備です。
先ずは出来ることから準備しておきましょう。
また「こんな取り組みもあるよ」とか「この内容が無い!」とかありましたらご指摘頂ければ幸いです。
最後までお読みいただき本当にありがとうございます!