危機管理解体新書②「リスクホメオスタシス理論」

こんにちは。

以前、危機管理解体新書①「オペラント条件付け」という記事を書きましたが、今回は第二弾
「リスクホメオスタシス理論」について一席。

・リスクホメオスタシス理論
あまり聞きなれない言葉かもしれません。1982年にカナダの交通心理学者ジェラルド・ワイルドさん(強そうなお名前ですね)が提唱した考え方です。リスク恒常性理論とも言います。
自動車を例に挙げると、自動車自体の安全性を高めてもドライバーは安全になった分だけ危険性の高い運転をするようになる。結果として事故の発生する率はあまり変わらないという理論です。

例えば冬の雪道で、夏タイヤのまま走っている人は滑るからとっても慎重にゆっくり運転すると思います。しかしスタッドレスタイヤに履き替えた途端に速度を上げて気楽に走り出す。結果事故の発生する確率は差して変わりはないということです。

また以前の記事で、大雨が降った時に危険だから川に近づかないでください。と言われればその分、気になって見に行ってしまうことを「カリギュラ効果」とお話しました。
この例でも「大きく頑丈な堤防があるから大丈夫」と思う心理に「リスクホメオスタシス理論」が働いていることになります。

「リスクホメオスタシス理論」はひねくれて捉えると「クルマの安全性能や道の改善などを進めても事故率は変わらないから無駄だ」と捉えられるかもしれません。
だからこそ「運転者の意識改革が必要だ」と提言している訳です。

・ハードウェアの発達
自動車自体の安全機能(衝突軽減ブレーキやオートパイロットなど)の向上は目を瞠るものがあります。
ひと昔前のクルマにはエアバッグすらなく、更に遡るとシートベルトすらないクルマも当たり前のようにありました。
またナビゲーションの普及も、いちいち地図を広げたり迷ってウロウロすることが少なくなるので事故低減に一役買っている筈です。
また道路の改良など、自動車を含めた「装置」「環境」の改善により死亡事故は低減されてきています。


警察庁ホームページから抜粋

上記の表からも交通事故発生件数を含め全体の指標は令和2年からは横ばいですが減少傾向にあります。
「装置」や「環境」だけでなく交通事故防止啓発運動も功を奏していると思います。

・使うひと
例えば包丁は料理するときに欠かせません。しかしそれをひとに向けると一転して凶器になります。
ひとが使う道具の大抵はそういう二面性があり、自動車はその最たるものだと思います。
結局は使うひとが正しく使う。注意をもって使う。事故低減はこれしかないのだと思います。
近年の事故発生件数などの指標の改善は、ハードウェアの発達だけでなく沢山の啓発活動のおかげなのです。
だからこそ、我々ももう一度ハンドルを握るときには十分に注意しなくてはならないと思います。

自動車の完全自動運転までもう少し掛かると思います。そうなったらそうなったで別の事故があるかもしれません。きっとその時代になったとしても「ひと」が気をつけなければならないという点は(今と別の注意が必要という意味で)そんなに変わらないと思います。

ひとが生活をするひとの社会は何処まで行っても「ひと」なんだろう。

最後までお読み頂きありがとうございます!